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IT化経営羅針盤239 業務可視化は箇条書きから?

2025.02.25

業務の可視化は企業のデジタル化の最重要な作業であり、最大のハードルでもある…。これは、どの企業システム化の本を読んでもセミナーを聞いても同じことを説かれる、ほぼ常識と言っても過言は無いと思います。しかし現実には、可視化のプロセスを省略してしまったり、可視化不十分なままシステム導入を検討してしまうといった失敗には枚挙にいとまがありません。可視化が重要であると認識しつつもおろそかになってしまう、せざるを得ない理由は様々です。しかし、その中に高い頻度で「難しさ」があることは間違いありません。今回は、その難しさについてのお話です。

いきなり業務フロー図を書こうとする失敗

「業務フロー図を書くのだから、図を書くところから始める…」。可視化に着手したほとんどの人は、当然の様にいきなり業務フロー図を書こうとします。確かにそれでも可視化を完了できる場合もあります。しかし、当社が見ている限りではそれは「少数派」にとどまります。特に十分な人数を可視化作業に割り当てできない中小企業では、ほぼ「フロー図から書き始めて完成した」という例を見たことがありません。

この理由は非常にシンプルで、以下の3つに大別されます。

(1)作図ソフトを思いのまま使えるスキルの社員が少ない
PCを使える社員のほとんどが表計算ソフトを使うことはできます。しかし、図を描く機能を習得している現場社員は実は少数派です。仕事でなんらかの絵図を書く必要がある社員や、経営層になんらかの説明資料を作るためにプレゼンソフトを日頃使い慣れている人であれば、ほぼ苦もなく作図機能を使えると思いますが、中小企業ではそのような人は少数派です。大企業であれば、組織内に必ずそのようなスキルを持っている社員がいるので、人捜しには苦労はしないかもしれませんが、可視化は複数の部門の担当者が集まって行う作業ですので、全員が作図になれているとは限りません。結局企業規模の違いでハードルの高さは異なりますが、いずれにしても作図が一つのハードルになることは間違い無いのです。

(2)いきなり作図すると粒度が荒くなる
作図という作業は、文字を入力するよりも手間数が多く時間もかかります。つまり、入力しているうちに思考が途切れてしまいます。また、「なんとか入力を楽にしよう」という意識がどうしても働いてしまいますので、これらの結果自然に「省略意識」が働いてしまいます。これにより、粒の小さな業務の可視化がおろそかになったり、本来は可視化しなければならない例外処理を無視してしまうということが発生するのです。

これらを回避するためには、可視化作業にあたっている人の負担を増やさざるを得ません。大企業であれば、必要な期間、通常業務から外して可視化業務に従事させるといった荒技が可能ですが、中小企業では望むべくもなく、結果として可視化不足が発生してしまうのです。
大企業であっても、人的リソースの追加配分を作業途中で求めることはなかなか難しいので、よほど社内力学に強い人が関与していない限り、可視化不足を招く可能性があります。

(3)人によって粒度が違いすぎる
業務フローは、「組織間の業務の関係性を可視化する」という側面があります。従って、「川上部門のアウトプットが川下部門のインプットになる」ことが基本なわけです。ところが、川上部門の担当者と川下部門の担当者で可視化の粒度が大きく異なった場合、おかしなことが発生します。つまり、「川下部門が必要とするインプットを川上部門が可視化していない」という事態です。当然、気がついて修正されるべきなのですが、部門ごとにフロー図を描いている場合、その事実に気がつかないことがあるのです。全員集まってフロー図を作図していれば、さすがにそのようなことはないのですが、上記の通り作図作業は文字を入力するよりも時間がかかるものなので、複数人が集まると時間的な無駄が発生してしまいます。それ故に「完成した図を持ってくる」ということになり、このようなおかしなことが発生し、気がつかずに放置されてしまうのです。

箇条書きから始める業務可視化のススメ

このようなあまり目立たないハードルが多いこともあり、業務プロセスの可視化が中途半端に終わってしまったり敬遠されてしまったり、もしくは粒度がバラバラで可視化したことにならなかったり、といった不都合が発生するわけです。せっかく可視化に乗り出した会社が途中でこのような中途半端なことになることは避けたいものですね。

そこで当社では、

可視化はまず箇条書きから始めましょう

ということをおすすめしています。「なんて小さい話題なんだ」と突っ込みが入りそうですね。しかも、作業工数の面では「箇条書きリストを作って、後でフロー図に書き直す」という二段階を踏むこととなりますので、遠回りにも見えます。しかし考えてみてください。前述の通り「いきなりフロー図を作る」ことには実務上のハードルが存在する、作図は苦手だが文字の入力程度なら全可視化担当者が可能である、ということを勘案すると、「皆さんの業務を作図してきてください」というよりも「皆さんの業務を時系列に沿って箇条書きにしてきてください」という方が遙かに楽なわけです。

しかも、箇条書き作成であれば、宿題としてお願いすることも容易です。
こうして各部門のキーマンや責任者から箇条書きにした業務を事務局社員が集めれば、いったんは業務の拾い出しは完了です。後はこれをフロー図に「変換」してあげれば検討用の業務フロー図が完成します。ここで「変換」と申し上げましたが、これは当社を含めあちこちから販売されている業務可視化ソフトウェアが持っていることが多い機能です。従って、ソフトによって手順の差はあれど、ほぼ自動か半自動で箇条書きから業務フロー図に自動変換ができるのです。しかも、箇条書きの業務リストを全部門から集約し、複数の部門にまたがる業務の流れを時系列に整理した表にしておけば、業務の塊をひとつながりのフロー図に変換してくれますので、前述のような漏れや粒度不足も発見しやすくなります。

いかがでしょうか?
世の中、「可視化するのなら業務フロー図を書いてくださいね」と言うだけで半ば突き放してしまう業務コンサルやIT業者が多いのですが、それはその作業が彼らの業務守備範囲でないことと、そこで間違いが発生した時に責任がとれないからに他なりません。IT導入者側はほぼ孤立無援で自社作業として可視化に取り組まなければならないのが実情です。しかも、可視化業務の経験が必ずしも豊富ではない、だいたいの場合は初めて可視化に取り組む様な方々にとっては、時間的にも負担面でも大きなストレスになります。
箇条書きから業務の可視化を始めることは、これらのストレスを軽くし、可視化不足や漏れを防止する有効な手段になるわけです。一見すると遠回りですが、是非お考えいただきたいと思います。

なお、当社では業務可視化のプロジェクトを指導するファシリテーション付きのコンサルティングメニューも用意しています。ご興味があれば是非お問い合わせください。

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