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IT化経営羅針盤245 中小企業が安易に導入しやすい、簡易DXツールの功罪

2025.05.20

最近テレビなどのメディアで、単機能のDXツール(ソフト)の告知を良く見かけます。どの宣伝も「導入が簡単」「費用的な負担が少ない」「だれでもできる」といった、導入障壁の低さをうたっています。当社のお客様の中にも、上手に使って効果を出している企業があることは事実です。しかし、それがすべての企業に無条件に当てはまるかというと、残念ながら「否」と言わざるを得ません。今回はこのような簡易ツールの功と罪について、現場の実情も踏まえて解説してみたいと思います。

簡易DXツールとは?

中小企業におけるDX推進の第一歩として導入されやすいのが、いわゆる「簡易DXツール」と呼ばれるタイプのソフトウェアです。たとえば、ノーコードで簡単に業務アプリが作れるツールや、稟議・経費精算などに特化したワークフローシステム、あるいはファイルを共有するためのクラウドサービスなどがこれにあたります。これらは、会社全体の業務を統合する“基幹システム”とは異なり、特定の部門や業務ごとに導入される、比較的軽量で手軽なソフトウェアです。

こうしたツールが導入されやすい理由は明確です。たとえば「紙でやっていた稟議を電子化したい」「Excelで管理していた日報を共有したい」「顧客対応履歴を手軽に残せるようにしたい」といった、目の前の“ちょっとした不便”をすぐに解決できるためです。しかも、導入費用が比較的安く、数日から数週間で立ち上げられるという手軽さも大きな魅力です。

実際、現場での効率化には貢献します。紙資料が減る、手書きが不要になる、履歴が残る、といった基本的な効果はすぐに実感できます。現場社員の満足度も高く、「うちもDXが進んでいる」と思えるきっかけになることもあるので、今までデジタル化で立ち後れてきた中小企業の間で人気が高まっています。

安易な導入が招く問題や課題とは?

こうした簡易DXツールの導入は、「部分的な効果」は出しやすい反面、部門ごとのバラバラな導入が続くと、次第に大きな弊害が顕在化してきます。

よくあるのが、「営業部門では顧客管理アプリ」「製造部門では作業報告ツール」「経理では経費精算のクラウドサービス」など、各部門が勝手に導入してしまい、情報が“点在”してしまうケースです。導入当初は現場ごとに便利になりますが、部門をまたいだ情報のやり取りが発生した途端に、状況は一変します。

本来、部門間の情報連携はシステムが橋渡しすべきところですが、それができないため、「人が手作業でコピー&ペーストをするデジタル手作業」が日常化してしまいます。たとえば、営業が入力した受注情報を製造管理用の表に転記したり、現場の日報を手作業で集計して報告書にまとめたり…。これでは何のためにツールを入れたのかわからなくなってしまいます。

さらに深刻なのは、こうした“手作業の連携”を効率化しようとして、表計算ソフトのマクロを駆使して複雑な仕組みを作ってしまう場合です。これが特定の社員しか触れないブラックボックスとなり、もしその人が異動・退職でもしたら、誰もそのマクロを理解できず、業務が止まる――。これはもう典型的な属人化の罠です。

結局のところ、全体の設計を考えずに“便利そうなツール”を次々と導入してしまうことが、後々の運用コストや管理リスクを高めてしまうのです。現場の声に押されて導入したツールが、かえって「業務の壁」や「手作業の増加」を生んでしまうというのは、本末転倒と言えるでしょう。

導入の前に「全体の設計」を考えよう

まず行うべきは、自社の業務の構造を棚卸しし、情報の流れを整理することです。どこに情報があり、どこで繋がっていて、どこで途切れているのか。こうした構造を見える化した上で、「どこにデジタルの支援が必要か」「全体でどんなデータ共有が必要か」を踏まえて、最適なツールを選定すべきなのです。手間がかかりそうなら、簡易的にやるぐらいでも構いません。肝心なことは、このプロセス抜きでソフトの導入を決めることは失敗を招く、ということです。 ITベンダーが推奨してきたからとか、導入が簡単そうだったからという理由だけで、簡易ツールを安易に採用せず、全体最適を見据えること。それが、真の意味でのDXのスタート地点であり、将来にわたって持続可能なデジタル活用の第一歩なのです。

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