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IT化経営羅針盤107 帳票決済「ビジネスプロセスそのまま」で良い訳がない

最近、TVCM等でビジネスプロセスを何も変更せずに電子的に書類決済ができる、と宣伝しているシステム会社があります。その方法の存在を認めない訳ではありませんが、業務に何も変革を求めずにIT化するという道に逃げてしまう会社を増長させてしまうのではないかと危惧しています。何しろ、IT化(≒電子化)のメリットは業務改革とセットでのみ得られるものだからです。

システム化を進める為には、業務の見直しや改革が必要であることは、100回を越えるこのコラムでも何回もしつこく解説してきました。システム化する、ということは大なり小なりの投資をする事になりますので、単に現状を電子化するだけ、つまり経営的リターンが何も無いということは、企業として許されないからです。ところが昨今のテレワーク化の動きにともなって、「ビジネスプロセスそのまま」というコピーとともに電子帳票処理のシステムを販売する会社が現れています。その会社のことをとやかく言うことは致しませんし、そのようなニーズもあることを認めない訳ではありません。しかし、この宣伝コピーには企業をミスリードするリスクが隠れていると考えています。つまり、「本当であれば業務やビジネスそのものを改革し、さらなる市場、さらなる生産性、販売チャンスアップ、収益力拡大のきっかけとなるはずだったIT化の流れを、現状維持方向に矮小化させてしまうかもしれない」というリスクです。デジタル化については諸外国から20年以上立ち後れている、このままでは30年遅れになるかもしれない、という国家総ぐるみでの危険性に直面している日本なので、今回のコロナ禍を引き金としたデジタル化の波を「単なる現状維持デジタル化」に留めてしまうことは、諸外国からの遅れを直視していないと言わざるを得ません。業務を改善ではなく改革する、もしくは、現状のビジネスそのものをデジタルによって別モノに変えてしまうことこそ、IT化の一丁目一番地です。当然、変革には抵抗もありますし、なかなか一筋縄ではいかないことは事実ですが、せっかくデジタル化の引き金が引かれているのにそれに正面から向き合わないのは、いかにも損です。

しかし、どうしてこのようなコピーが平気で出回る世の中になったのか、ここまで書き進めて、私自身もふと気になり始めました。当然どこにも正解情報は無いので、あくまでも推測の域を脱することはありませんが、考えてみるとおそらく…

 

 業務改革の抵抗勢力の前に社長が屈している

 業務改革の抵抗勢力の存在に対して社長が無関心を装っている

 

からなのだと思います。両方とも、抵抗勢力、つまり現状維持派を押さえつけて改革を前に進めることができない社長のお困りの姿を何回か目撃した経験からの推測です。しかしなぜ、抵抗勢力に抗うことができないのか?お叱りを受けることを承知の上で敢えて持論を展開させていただくなら・・・社長の立場の大きさをきちんと使いこなし切れていないこともあると思いますが、それよりもおそらく「現場を納得させて改革に取り組ませる為の社長の思考の理論性が足りない」ことが大きいと思います。つまり平たく言えば、合理的な業務改革を考えることができない、ということになります。考えることができなければ、知り得た知識だけで動くこともあるでしょう。しかしそれでは社長としての熱量が大きくならず、結果的に抵抗勢力が現れた際に抗しきれなくなる。「現場の賛同を得られなかった」と敗戦の弁を口にする、ということになります。

IT化というものは、社員に全部を丸投げすべきことではないことは何回も申し上げてきました。少なくとも社長のデジタル化への強いビジョンがあり、それを論理的に説明できるだけの咀嚼と解釈ができていないといけない訳です。それが足りないが故に現状維持派に押し返され、結果的に「ビジネスプロセスそのまま」のシステムを導入して形だけを整え、成長に結びつかない投資を実行してしまうことになるのです。

少し辛辣な表現が多くなってしまいましたが、現状維持システムを導入する必要性などどこにも存在しません。システム化、IT化、デジタル化、いろんな表現がありますが、とにもかくにも改革とは無縁ではいられないものなので、社長は戦略的にデジタルに向き合う覚悟が必要なのだと思いますし、それを持った社長が率いる会社が先に伸びていくのだと信じています。

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