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IT化経営羅針盤109 「あとでまとめて入力」は日本人の悪い癖だ

国のワクチン接種管理の仕組みの運用に関する報道が相次いでいます。なんでも「国が把握しているワクチン在庫量(使われていない量)と自治体が把握している数に乖離があり、国から見ると自治体に過剰な在庫が溜まっている様に見える。」とのことです。ことの真偽はここでは論じませんが、その乖離の理由として多くの自治体が口にしていることが「システムへの登録は後でまとめてやっている」でした。国レベルでの大事業における「後でまとめて入力」と一般企業におけるそれは規模の点では全く違いますので、この事例が企業の作業効率向上に対して参考になることは無いかもしれません。しかし、この「あとでまとめて入力」は日本人がどうしても捕らわれてしまいがちな悪い癖なのではないかと思います。

同じ作業をまとめて片付ける、という手法は古くから効率の良い作業の方法として使われてきました。私も入社したての新人の頃、先輩社員から「同じ仕事をいっぺんにまとめてやるくせを付けないと効率が上がらない」と良く教えられたものです。その流れの一貫で、「システム入力についてもあとでまとめて入力する」という作業の進め方は一見効率が良い様に見えます。ところが、システム入力という仕事は少なくともキーボードやマウスなどの入力を伴う為、慣れた人がやらないと効率的では無いという特殊性があります。今回のワクチンの事案については、現場が医療現場であるという特殊性もあり、パソコン仕事(今回の場合はタブレット仕事)を別のタイミングで別の人が行う、という判断に至ったのでしょう。しかし、その判断をした人は「データ入力された後に、そのデータがどのように運用されるのか知らなかった・思い至らなかった」と思われます。ワクチン接種管理の仕組みであるので、当然ながら「ワクチン接種業務の進捗管理」に使われるであろうことは自明の理です。ところが、自治体の担当者はそこにあまり配慮しなかった。配慮していたとしても、自分達が入力するデータに対する迅速性要求、正確性要求まで想定できなかったのだろうと思います。この「自分達が入力するデータに対する迅速性要求」は、全体の業務フローを把握できていない場合に把握が難しいものになります。

民間企業では、例えば製造メーカーなら「工程着手実績登録」が今回のワクチン騒動に似ています。生産管理のご経験がある方であれば容易に想像できますが、「工程で製造着手する=必要な部品を実際に引き当てる」ということになるので、着手登録を即座に入力できればその分在庫がタイムリーに減っていきます。仮に「着手登録をあとでまとめて入力する」と、在庫からの部品引当は後回しにされ、その結果、データ入力される前に資材担当者がシステム在庫を確認するなどしてしまうと「消費されているべき部品在庫数を、あたかも余っているかのように誤認してしまう。」という危険性が残ります。

要するに、「自分達が入力するデータを後工程がどのタイミングでどのように使っているのか?」を把握できていないと、自分達の都合に合わせて入力タイミングをずらしてしまう、まとめてしまう、等の勝手な判断が発生し、その結果、データの登録がリアルタイムでなくなってしまう=データの価値が失われてしまう、という都合の悪い事象が発生するものなのです。

冒頭、これは日本人の悪い癖だ、と断じましたが、それは「作業の効率を現場のチカラで常に改善し続ける癖」の裏返しです。本当は日本企業独自の良い点ですね。しかし、入力されたデータをどの部署がどのタイミングでどう使っているのか?はなかなか見えにくいものです。見えない・知らないが故にデータのリアルタイム流通に悪い影響を及ぼす運用を行ってしまう・・・これは日本人の陥りやすい罠なのだと思います。

ちょっと考えればすぐに解ることなので、「なにをいまさら?」と言われても仕方ありません。しかし、企業の中を見渡してみると実に多くの「入力タイミングミスによる生産性悪化」が発生しているものです。是非一度身の回りの業務を見直していただき、「入力タイミング」という観点で業務分析されることをお勧めします。「ちゃんと入力しているのに、まとめて入力しているが故に、大小実に様々な問題を発生させている」ことに気がつくかもしれませんよ。

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