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IT化経営羅針盤124 DX、システム担当を雇っただけでは進まない

2021.11.29

DX、システム担当を雇っただけでは進まない先日、某経済誌で政府のデジタル化がなかなか進まないことが報じられていました。記事では「せっかくデジタル庁を創設したにも関わらず、何かプロジェクトを進めようとしても現場の抵抗にあうだけでなく、何かと先送りさせようとする圧力がかかる…」との趣旨。デジタル庁の担当者も「現場から様々な法律法令を持ち出され、思う様に進めることができない」といった悔やみ節を唱えている様です。これは、大きな組織であればあるほどよくある話で、特に行政組織が特殊なのだということはありません。要するにデジタル化の担当者に、現場の言い訳や諸事情を論破できるほどの業務知識と突破力が不足している、ということです。

例えば、以前当社にご相談に来られた医療機器卸売りの会社でも、組織はかなり小さいにも関わらず前述の行政と同じようなことが発生していました。社長曰く、「社歴が20年を越えるベテラン社員が数名のパートを使って倉庫業務を担っている。取引先との情報のやりとりや、在庫移動・出荷について全て複写用紙の伝票が使われており、更に扱っている商品種が膨大であるにも関わらず、商品データは全く整備できていない。医療危機により出荷数の激増を迎えているが、人手でカバーできる範囲の仕事しかできておらず、お客様にお断りをしている状況だ。」とのこと。私から、その現場リーダーに話しを通し、デジタル化に向けた作業着手の方向性を出す様に進め方を提案しましたが、社長は首を縦にふることはありませんでした。どうも社長は現場のリーダーに対してお立場が弱い様で、社員の機嫌を損ねないように注意していることが見受けられました。それでもと思い、現場リーダーとのWEB会議を設定頂きましたが、話が全くかみ合いません。リーダーは「社長が思っているほど現場の仕事は定型化できない。定型化できない以上、デジタル化は無理だ」との一点張りでした。

この会社は過去にもシステム化に取り組む為、システムエンジニアを中途採用したことがあるそうですが、雇い入れても数ヶ月でやめてしまうという繰り返しだったそうです。現場リーダーと話しをした私の感覚でも、いくら技術者が入っても現場が協力しない以上進展する訳が無いと思いました。なぜか?…。社歴の長いベテランが現場に張り付いている場合、そこにはほぼ100%「業務の属人性」が発生しています。要するに「その人しかできない仕事」が多くなっているのです。その状態で、システム化プロジェクトを進めようとしても、業務が標準化されていない以上進みようがありません。仮にシステム担当者を雇ってそこに貼り付けたとしても、現場から見れば邪魔者としか見えません。仮にうまく人間関係を構築できたとしても、20年もやっている仕事のやり方を仕組み化する意欲は現場側にはありませんから、どうしても通り一遍のことしかできません。結局システム担当者は諦めてしまうか、諦めないまでも局所的なシステム導入をしてお茶を濁すぐらいのことしかできないのです。

冒頭の行政組織のデジタル化についても通じるのですが、このような「現場に百戦錬磨の担当者がいる」場合については、その担当者を凌駕する突破力のあるリーダーが不可欠です。デジタル化は目的でも目標でもなく、あくまでもツール・手段の一つにすぎないため、最初の段階から技術者を必要とはしません。まずは業務の構造そのものを変えることを目的とした活動を展開し、どうすれば会社が伸びるのか、自分達のキャリアが磨けるのか、平たく言えば給料が高くなるのか、についてきちんと整理し、道筋を付けてからシステム担当者を入れてデジタル化を検討する。この順番しかあり得ないのです。要するに、会社の成長と従業員の成長をセットで考える場を設け、社員とベクトルを合わせて前に進めるように地ならしをする必要があるのです。従って単純に「当社の遅れているDXを進めよう」と考え、いきなりシステムエンジニアを入れることは本末転倒で、彼らが活躍できる土俵を構築しないまま強引にはじめようとすると、無意味な時間を浪費することになりかねないのです。

鳴り物入りで発足したデジタル庁ですが、多くの担当者を民間企業から招き入れた様です。聞いている限り、IT企業の元社員が多い様ですが、それでは、現場に張り付いていて法令にも詳しい現場担当者の壁を突破することは難しいでしょう。無駄なこと、不合理なこと、をいくら抽出しても現場は自らを変えにくい。そこにテコを入れるために、システムエンジニアではなく業務を理解し明確化する技量を持つ人を入れる。これこそがデジタル庁に求められている人材像なのだと思いますし、中小企業でも全く同じことが言えるのです。

民間企業の皆さんも是非「本末転倒」にならぬよう、ご留意ください。順番があべこべになっている会社がいかに多いことか…。

 

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