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IT化経営羅針盤161 データ流通マーケットとの向き合い方を考える

2022.11.28

安倍政権のころからのITに関わる政策の中に「国際的なデータ流通の枠組みの構築」というキーワードが含まれていることをご存知でしょうか?

一見すると何のことやら解らない政策ですが、これはこれからのビジネスの姿を大きく変革する可能性が高いトレンドワードです。トレンドといってもDXやIoTなどに比べるとバズワードにはなっておらず、比較的地味な扱いを受けていますが、これが本格的に立ち上がってくると企業の規模にかかわらず業界の激変が起きる可能性があるので、注目に値する分野です。

さて、この「データ流通」とは何かから考えましょう。どんな企業活動についても「人・もの・金」という3大経営リソースを使って事業を展開しています。近年ではこれに情報を付加して「人・もの・金・情報」と呼んでいる人も増えてきました。この「情報」の定義を明確化すれば「データ流通」についての理解が進むと思います。

製品やサービスを創り出す為、企業は様々の情報を扱います。いくつかの業種を例に挙げてみます。

運送業:地図情報、配送伝票に記載された個人情報、使うトラックの車両運行履歴、車両運行計画等々

卸売業:仕入れ先、販売先の情報、売れ行きの情報と将来の販売予測情報、配送業者の配送リードタイムと配送料等々

製造業:仕入れ先、販売先の情報、加工や組立の為の設計情報や加工条件の情報等々

小売業:仕入れ先、販売履歴、販売予測等々

もっと情報は多岐に渡っていると思いますが、きりがないのでこれぐらいにしておきます。これらの中で「社外に提供すると価値がある情報をビジネスにする」のが「データ流通」に関する基本的な考え方です。上記の例では、外部に提供すると価値を認められそうな情報は、

運送業:個人情報(直接外部に提供するのではなく、法律を守った形での利用目的)

卸売業:個人情報、販売予測情報や販売履歴情報

製造業:加工条件の情報

小売業:販売履歴

等になるでしょう。もちろん、これらを単独で外部に提供しても、おそらくそれだけではたいした価値は生まないか、または全く役に立ちません。しかし、例えば小売業の販売履歴を考えると、この情報と天候の情報、店舗が立地する地域周辺の人(群衆)の移動履歴(混雑度)、その人達の属性(性別、どこから来たか、何時に来たか等)、など、販売店からだけでは得られない情報を全て組み合わせることができた時、実に様々な分析ができるようになります。

すると、データ分析会社がこれら全部を入手できた場合、その小売業の会社に対して天候や曜日、季節、時間帯別にどのような人が店の前にいるか予測データを提供できるようになります。お店の方はそれに合わせて店頭ディスプレイを変化させることで、入店者数を増やすアクションがとれますし、それらの人にピンポイントに適した商品を中心に大量仕入れしておくことで売上も伸ばすことができます。つまり、自社で持っているデータと社外の会社が持っているデータを組み合わせて分析することで、今まで謎だったことが見えてきたり、データとデータの予想外の連動性が発見できる可能性もあるわけです。

さて、社内外のデータを組み合わせて新しいビジネス手法が編み出せる可能性があることはご理解頂けたと思いますが、ではどうやって外部のデータを入手するか、が課題となります。これが政府の言う「データ流通の枠組み」となります。ひらたく言えば「データ流通マーケットの構築」が必要です。しかもこれを国内だけではなく海外も含めて公平・公正に取引できるマーケットが出来れば、社会の発展に大きく貢献するだろう、という考えです。

データ流通マーケットでは、データそのものを開示することなく、データの中身がどのようなものであるのか知ってもらう為のカタログが必要になります。そのカタログの構造についても様々な研究と事例がありますが、これがきちんと機能すれば「どんなデータがいくつあるか」を知ることができ、その価格も簡単に解れば、さながら生鮮食品の卸売り市場の様な活発な売買が始まると思われます。

中小企業にとってもこの「データ流通」については関心を持つべきです。製造業であれば、年間単位の販売の予測が立てられることによって効率の良い部品の手配と製造の計画を立てることができるようになります。卸売業であれば、やはり年間を通じた繁忙期とその理由を明確化することによって、効率の良い仕入れを計画できるかもしれません。更に、今までは「こんなデータは役に立たないだろう」と思っていた情報をマーケットに出すことで、思ってもみなかった業種の会社からの購入を希望されるかもしれません。社内で死蔵していたデータがビジネス商材に変化する可能性があるのです。

データ流通市場については、国内でも協議会が立ち上がって、公正な流通の仕組み等の検討が行われているところです。現在はどんなデータをどこが持っているかわかりにくい状況ですが、マーケットが本格的に立ち上がった場合、宝の山のような状態に見える様になるかもしれません。データの活用はこれからの時代の成功の為の必須な取組です。是非今後も注目して行きたいと考えています。

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