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IT化経営羅針盤182 システムに入っているデータの責任者はいったい誰なのか?

2023.06.27

前回のマイナカードをめぐる騒動については、いくつか読者の皆さんからのフィードバックもあり、デジタル化推進派と慎重派(または否定派)の間の壁の存在を感じました。なにもかも否定されてしまう様では全く進歩がありませんから、そのような派閥は少数派であることを信じつつ、今回は少し関係する「データ移行に関する考え方」について述べたいと思います。

システムを新しくする際、もしくは何も無い状態から立ち上げる際のいずれの場合でも、立ち上げる寸前の作業として「データ移行」があります。平たく言えば、現在のシステムがあるのであれば、そのシステムに入っているデータを新しいシステムに入れ替える作業です。今動いているシステムが無い場合であっても、たいていは表計算ソフトに入っている、ファイルとして存在している、といった状態で、何からかの状態でデジタル化されていることが多くあります。それらも新しいシステムに入れなければ、新システムでの業務のスタートができません。

受注出荷管理にシステムを使っているのであれば、新システムを使い始めるまでにすべての受注に対する出荷を終えてあればよいのですが、おそらくそうはいかず、多かれ少なかれ注残を抱えているはずです。その注残(もしくは受注)のデータを新システムに入れて管理できるようにしなければなりませんし、何よりもお客様の情報(顧客マスター)はこれからもお取引を頂くので新システムに登録しなければ何も始まりません。これらの作業のことを「移行」と呼びます。

移行にはいくつか方法があるので、そのような技術的な方法は本コラムでは割愛しますが、システムを使う会社にとって重要なことは「誰がデータ移行の責任者なのか?」ということです。この問いを投げると、決まって一定の方々が「システム屋さんかシステム担当に決まっている」と決めつけますが、残念ながらそれは間違いです。

なぜなら、「データの価値や使い方を本当にわかっている人は、現場の担当者だけ」だからです。データの移行作業における間違いは、後々に大きな禍根を残すか、そもそも新しいシステムでの業務は開始できません。

例えば、顧客データを例に考えてみましょう。顧客データは、B2B取引の会社であれば、おそらくこんな構造です。

社名

住所などの連絡先

担当者名

取引条件

これ以外にももっと細かな情報があるかもしれませんが、基本的には上記の様な情報だと思います。「この程度の単純なデータなら簡単に移行できるね」と思ったら大間違いです。社名一つしてみても過去の運用では「略称社名」と「正式社名」が混在しているかもしれません。人間の運用度合が高ければ高いほど、「こちらのデータを使っている」といったアナログ的な運用をしていますので、今までは問題無くとも、データの移行がおろそかだと、同じ会社なのに複数のデータが存在してしまい、多くの場合混乱します。また、担当者名のところに複数の人名を入れていたり、そもそも人名ではなく職場や係の名前を入れてしまっているかもしれません。

これらの問題は「データが汚い」とか「整理ができていない」という種類の弊害ですが、システム担当者だけでデータの移行をした場合、これらの問題が見過ごされてしまうことが多々発生します。つまり、データの移行作業だけでなく、元データの責任、移行結果のデータを確認する責任も含めてすべて現場担当者の責任でデータを扱いつつ移行するべきなのです。

もちろん、データの移行にはシステムベンダーの技術者の支援が必要な場合も多くあります。ただ、その移行作業の仕様や、移行結果の確認はあくまでも現場の責任で行うべきなのです。そうでないと、正しいかどうかの正確な判断はできません。

マイナンバーでもデータの紐づけ作業ミスが問題化されていますが、そのデータは誰のものでしょうか?マイナンバーを持っている当事者のものだと私は思います。つまり、正しく紐づけできているか最終確認するのは、国民自身だと思うのです。行政担当者が最終確認しようとすると、どうしても2重チェックぐらいしかできません。それが正しい結果になればよいのですが、そもそも赤の他人が確認するのは不正確ですし、非効率だとも思います。紐づけ手順の中にマイナンバー所持者の最終決済が入るような業務手続にすればよいのだと思いますが、いかがでしょうか。

システムに入っているデータの責任者は誰?この命題はシステムをスムーズに更新する際のキーワードであることを忘れない様にしましょう。

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