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コラム / IT化経営羅針盤
IT化経営羅針盤253 「ペーパーレス化」は時代遅れ?それともまだまだトレンド?
2025.07.30

「ペーパーレス化」…。この言葉を初めて聞いたのはいつの時代でしょうか?少なくとも20世紀であることは間違い無く、日本の失われた30年と呼ばれている期間のごく最初の方には登場していたとうっすら覚えています。この紙をなくしましょうというスローガン、というか半ばおまじないや宗教のごとく繰り返し聞こえてくるキーワードは、本当に仕事の為になるのか?ためにならないケースはあるのか?について持論を展開したいと思います。
最初は「紙の削減」そのものが目的だった
「ペーパーレス」が叫ばれ始めた当時、その背景は今とは様子がまるで異なりました。「無駄なコピーはやめよう。紙がもったいないから。」という省エネ・省資源意識が強烈に流れていたと思います。当時は、1970年代後半に登場した「省エネルック」の流れをくむ、軽装のスーツスタイルが一部で見られ、やがて2000年代には「クールビズ」などの取り組みへとつながっていきます。その後橋本内閣の頃だったかと思いますが、温暖化ガス削減の国際会議が京都で開催され、京都議定書に則って省エネルギーを進めようという機運が盛り上がっていた時代です。
企業の中に目を向けると、当時は大手企業を中心にPCの普及が進み、スタッフはほぼ自分専用のパソコンを持ち歩き始めた時代です。 そのようなハードウェアの普及が背景としてありましたので、「会議で無駄な資料を配付するのはやめよう、資料は投影にしよう・事前にデータで配布するようにしよう」という趣旨からペーパーレスの取り組みが始まりました。
「紙の多用はデジタル化ができていない印」だ、という認識への変遷
そのような背景の中で始まったペーパーレスでしたが、企業業務のデジタル化が亀の歩みで始まるとともに、徐々に「紙=アナログ業務の象徴」という認識が広がり、少しずつ「紙が残っている仕事があるなら、それは非効率だ」という意味合いに変わっていきました。おそらく皆さんの中でも、このような文脈で捉えている方が多いと思います。
お叱りを覚悟の上で敢えて持論を展開しますが、この点について私は「紙に対する偏見だ」と捉えています。なぜなら、紙を一つのメディア(媒体)として捉えると、実に利点が多いからです。ちょっとリストアップしただけでも以下の様な「他メディアには無い特徴」が紙にはありますね。
軽い/薄い/閲覧性に優れる/電源不要/ハードウェア不要/油や土汚れに強い/一定の長期保存が可能/安価
残念なことに、これらの特徴を具備した紙以外のメディアを、人類は今のところ発明していません。
媒体特性を最大限生かした使い方がスマート
ここまで考えると、紙は紙、ディスプレイはディスプレイ・・・といったメディアごとの使い分けを徹底する方が遙かに合理的であると断言できると思います。
例えば金属加工の現場では、パソコンとディスプレイやキーボード・マウスといった機器類を工作機械の横で使うことには課題があります。私がお邪魔した数々の現場でも、オイルミストがかなり激しかったり、夏場はかなりの高温の環境になってしまうため、そもそもPCを現場で使う、ということがあり得ないことでした。それでも部品表や加工指示・製造指示書などは現場ではどうしても必須です。これらを現場で使うには紙媒体でしかあり得ません。
また、農業法人では、現場が圃場そのものなので、完全にアウトドアです。おまけにWIFIの電波が飛んでいる状態でもありません。あるIT業者は「タブレットか防水の端末を使えば良い」と言い放ったそうですが、防水スマホでも泥に汚れた手で使えば故障を招きますので現実的では無いという判断をされたそうです。ここでも、「多少汚れてもなんとか読める/書ける紙が良い」という判断になりました。
それでも社長によっては「当社は紙が多いからダメだ」と言っている方も多くいらっしゃいます。紙にはそれ以外にも「紙に手書きで書けば記憶に残りやすい」という効果もあるので、そこまで紙を敵視する必要は無いのではないでしょうか?
むしろ、
印刷しても、誰も使わないでファイリングされるだけの書類
部門間のデータ受け渡しのために伝票を出力するような業務
といった、無駄を、システムの改善によって実現するという考え方を持った方がよろしいかと思います。
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どちらかと言うと紙を擁護する内容になりましたが、実は私自身は電子ペーパー搭載の端末を常に使っています。メモをとっている最中、ちょっとしたポンチ絵を描きたいことがかなり多いからです。ポンチ絵をメモに混ぜることは、パソコンにてメモをとっていると、スムーズにいきません。これも適材適所のメディアの使い分けだと思っています。
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