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コラム / IT化経営羅針盤
IT化経営羅針盤257 業務プロセスの可視化と企業ガバナンス
2025.09.02

いきなり深い内容を想起させる題名を書いてしまい、難しい内容ではないかと誤解されそうですが、あまり警戒しないでお読みください。今回の話題は、いつものデジタル化とは打って変わって、「企業統治」のお話になります。デジタル化経営コンサルタントの私が、このようなガバナンスの話題を書くのは少しお門違いではないかと言われそうですが、実はあまりそうでもありません。
企業内の不祥事やトラブルの話は枚挙にいとまがありませんが、表沙汰になるのはほぼほぼ大企業での事件だけでしょう。しかしその陰には、何倍かわかりませんが、相当な数の問題が中小企業で発生し、それは報道もされずに片付けられていることは疑いようも無い事実です。その中の悪質な案件については背任や横領などの法律に触れる内容になるので言語道断ですし、この場で話を展開する内容でもありません。しかし、そのような重大なトラブルの発生確率は、ハインリッヒの法則やバードの法則などで語られていますが、小さなトラブルや事象が発生するのであればいずれ確率論的に発生するものです。発生するトラブルの内容によっては、外部公表や当局への通知が必要になるものもあるでしょう。そうなると体力に劣る中小企業にとってはいきなり死活問題です。それが発生しないようにするためには、規模が小さい組織であったとしても最低限の企業統制を考えなければなりません。また、話の方向性は異なりますが、企業売却や事業譲渡を考える際にも、企業統制に関して最低限のレベルをクリアしていることを証明せねばならず、それが不十分であると企業価値の毀損につながります。さて、それを進めるための具体的な方法はどのようなものでしょうか?
- 企業統制と業務プロセス可視化の関係
- 企業統制改善は内部活動がベストな理由
企業統制と業務プロセス可視化の関係
一般的に「企業統制」は以下の3点セットで管理するもの、という定義がなされています。
業務フロー図
業務記述書
リスクコントロールマトリクス(RCM)
このうち、このコラムの読者であれば、業務フロー図についてはあらためて説明する必要は無いはずです。業務を時系列にフローチャートで書き表したものですね。では、業務記述書はどのようなものか?ですが、これも言わずもがなで、ある業務の流れと内容を説明する、業務の説明書の様なものです。これは、業務フロー図が可視化されていれば抜け漏れなく書くことができるはずです。最後にリスクコントロールマトリクスですが、これは「どの業務でどのようなリスクが考えられるか?それをどう統制(コントロール)するか?」を記述した一覧表になります。
これらの3点セットと呼ばれる書類は、金融商品取引法のもとに、上場企業に対してこれらの整備と評価・報告が義務づけられています。
これらを作ると、業務フローの中で何をどんな管理せねばならず、その業務でリスクが顕在化しないようにするために、どのような施策が必要か明確化されます。たとえば、入金の管理を一人に任せきることはせず、複数人でダブルチェックできるような業務にするなど、主にワークフロー上の工夫で対策されることを多く見かけます。
しかし、これらを整備しようとすると、そこそこ手間がかかりますし、定期的な改版も欠かせないため、企業にとってはかなりの負担になることは容易に予想できます。
監査法人などを中心に、このような業務をまるごと受託する会社もある、ということは、企業側に大きな負担が生じている証左でしょう。
企業統制改善は内部活動がベストな理由
さて、これらの3点セットの書類ですが、企業のデジタル化にも使えるという側面を見逃してはなりません。業務フロー図は業務の可視化をしているものですし、リスクコントロールマトリクスは、業務課題一覧と言い切っても過言はない内容で、大部分を共用できます。業務記述書は業務の内容を文章で書かれたものですので、業務フロー図を補完して説明するためには最適な資料です。つまり、これらをそろえることによって、本コラムで常に述べている「業務プロセス管理図によるデジタル化方針の立案」もできるのです。
このように考えると、これら3点セットを企業統制のためだけに作るのはいかにももったいないですね。どの部分をどのようにデジタルで変えていくか?IT業者に自社業務とその課題を説明するための資料にすることも、「3点セットのちょい変」で充分可能です。というか共用しなくてはもったいなくていけません。
そして、これらの3点セットを作るために外部業者に丸投げ委託してしまうと、業務可視化の粒感が粗いものになりかねず、「法律上の要件を形上整えるだけ」になってしまう可能性がある点にも配慮する必要があります。社内プロジェクトを立ち上げ、社員の手でこれらの3点セットをそろえることができれば、「企業統制上の対応」と「デジタル化の打ち手」の両方を同時に検討できることになります。しかもデジタル化の打ち手については、自動的に扱うデータの正確性を担保することも同時に考えることになりますので、ワークフロー以外にも「XX処理の承認はYY部門の部長が行う」といったシステム上での役割設定ができます。つまり、内部統制だけを考えてしまうとワークフローシステムを単独で導入しなければいけない事態を招きますが、デジタル化の打ち手と一緒に企業統制を考えれば、ワークフローシステムに頼るのではなく、業務システム側で統制を実現できる可能性があるのです。単純に2重投資を防止できますね。
そんな理由があるので、私はこの作業を外部に丸投げするのは損だと考えています。もちろん、完成した3点セットを企業統制面で確認して欲しい場合には、妥当性確認のコンサルティングを専門家に委託するのが良いと思います。しかし、この仕事は3点セットをゼロから作る仕事ではないので、工数仕事を伴いません。それにより比較的安価な金額で委託可能なはずです。
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せっかくの可視化と課題抽出作業ですので、企業の「守り」である企業統制以外に、「攻め」であるデジタル化にも使わないと損ですね。 ちなみに、当社の可視化自動化ソフト「簡単プロセスビルダー」は、業務フローの作図とリスクコントロールマトリクスの元となる課題一覧を同期管理できますので、社内プロジェクトで3点セット作成に取り組んだ場合にも大きく負担を削減できます。
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