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コラム / IT化経営羅針盤
IT化経営羅針盤262 企業は取り組まない理由がない ローカルAI
2025.11.11

AIやその発展系であるAIエージェントに注目が集まって久しい昨今ですが、ひとつだけ無視されていることがあると思います。それがAI活用時の情報セキュリティ。現在さかんに使われている生成AIは、一部のAI搭載PCのものを除き、そのほぼすべてがクラウドサービスで提供されています。生成AIは非常に大量の計算資源を使いますので、大規模なデータセンターでサービスを提供することは非常に合理的ではあります。しかし、そのAIのデータセンターまでインターネットを経由して接続して使っているわけですから、セキュリティのリスクはどうしても発生します。
AIサービス提供ベンダーさんに説明してもらうと、大体の場合、
パソコンとの通信は暗号化されているので安全
データセンターは万全なセキュリティ対策を施しているので安全
生成AIに使われるユーザーのデータを「学習」することはないので安全
と言われます。しかし、これらをそのまま真に受けてしまって良いのでしょうか?それが本当に大丈夫なのであれば、企業がセキュリティの懸念から利用を控えてきた一般消費者向けのクラウドサービスを、AIのエリアにおいて野放図に使うことになってしまいます。「AIはそういうものなので仕方ない」という声も聞こえそうですが、それはあまりにも思考停止すぎます。
そのような心配を払拭できるAIが「ローカルAI(ローカルLLMとも呼びます)」になります。このコラムでも何回か話題にしましたが、これはパソコンの上で動作するAIです。詳しいことは省きますが、このパソコンで動く生成AI関係のソフトウェアは、近年めざましい発展を遂げており、期待する機能をある程度限定しさえすれば仕事に役に立つレベルに到達しています。今回のコラムでは、そのローカルAIの利活用について解説したいと思います。
- 業務に利用できるまでレベルアップしたローカルAIソフトウェア
- ローカルAIを使わなければならない業務がどの企業にもある
業務に利用できるまでレベルアップしたローカルAIソフトウェア
ローカルAIはあくまでもPCの上で動きますので、すべてのソフトウェアをPCに装備していないといけません。実は近年そのソフトウェアが大発展してきているのです。世の中に大量に流通していますし私も調べ切れていませんが。例えば・・・
生成AI(LLM)本体
名だたるAI企業は漏れなく開発を競っています。
もちろん、パソコンで動作する程度の大きさに制限されてしまいますが、それでも
高性能化はどんどん進んでいます。
生成AIを動作させるソフトウェア基盤
生成AIの環境を構築するには非常に面倒で細かい操作が必要となります。
それを一手に引き受けてくれるソフトウェアが発達し、利便性が増しています。
AIを「仕事に使えるようにする」エージェント機能のソフトウェア
様々な業務の流れを定義し、その中に生成AIなどを組み込むソフトが発達
しています。従来はソフトウェアを書かなければなりませんでしたが、最近では
このようなソフトを使ってソフトウェアを開発せずに設定だけで作ることが
可能となってきており、さらに非常に実用的な機能を提供してきています。
そしてさらに、これらの有用で十分に使い物になるソフトウェアがオープンソースとして無料で使える状態で公開されていることに注目するべきです。もちろん、それらを使ってさらに売り物を作ることには一定の制限がありますが、大抵の場合は社内ユース程度であれば無料で機能制限もない状態で使えます。クラウドベースの生成AIが月額課金となっていて、会社で使うには相当な経済的負担になるのと比べると、格段に有利です。
ただ、良いことばかりではなく、これらのソフトの組み合わせや構築するための手順の中には、そこそこ技術知識を要求されるため、「知識ゼロで構築できる」という状態ではありません。ある程度のハードルがあることも事実ですが、これらすら生成AIの助言を得ながら作業を進められますし、関係業界もこのハードルを下げるための努力を続けているので、早晩解決してゆくことだと考えられます。
また、これらのソフトウェアを十分な速度で動作させるパソコンのハードウェアも、現在ではそこそこ高価なものを選択しなければならず、その制約条件と使えるソフトウェアの間にも強い関係があるので、この点もハードルです。ただ、それすらもAI関係のハードウェアメーカーが熾烈な競争を続けているので、早晩解決し、徐々に値段も下がってゆくことでしょう。それも何年もかからず、数ヶ月のうちに…なのかもしれません。
ローカルAIを使わなければならない業務がどの企業にもある
ここが一番のハードルなのかもしれません。急速に実用的になった生成AI、これをどのような業務分野に応用するか、皆さん多かれ少なかれ考えたことがあると思います。何かの相談をしている限りにおいては、壁打ち相手として結構相談相手になりますね。しかし、それが「何かの定型業務を行わせる」「何かのデータの分析をさせる」「製造工程の改善をさせる」「製造不良についてその原因と対処を提案させる」といった業務に使おうとすると、当然その前提となる会社の情報をAIに「食わせておく」必要があります。また、人事情報をもとに、社員の育成プログラムを組んだり、経歴と本人希望を組み合わせて人事異動を提案させるなどした際には必ず社員の個人情報を生成AIに「食わせる」必要があります。B2Cの会社であれば、ロイヤルカスタマーを抽出し、それに対するプロモーション施策を提案させるためには、顧客情報を生成AIに「食わせる」必要があります。
これらの「機密情報」をクラウドベースの生成AIに「食わせる」ことになった場合、それはその情報をある程度ネットワークや社外が開発したソフトウェア・サービスに事前提供する必要があり、その際に情報セキュリティの問題が発生します。
このセキュリティリスクを許容できない場合、そのデータを使った上記のような業務には生成AIの光は当たりません。
中小企業の場合、顧客から機密情報を預かっていることが多く見かけられます。例えば、製造業であれば図面や部品表、その他の技術情報になります。これらは当然守るべき機密情報ですので、万が一にも漏洩することは許されません。仮にクラウドの生成AIにこれらのデータをアップロードしていた時、何かのサイバーアタックで、当該データをクラウドにアップしていたことが露呈した場合、おそらく「なぜ機密情報をアップロードするなどしていたのか?」という極めてきつい指摘が来るはずです。取引停止になる可能性も高いでしょう。
もちろん、クラウドの生成AIを提供する会社でも、その点を勘案し、データを暗号化して漏洩しても無意味なデータに変換してしまうようなことをやっているサービスも提供しています。しかし、それを使う場合であっても、
「肝心の情報を暗号化する=AIが分析できなくなってしまう」
ようであれば、元も子もなくなりますね。実に悩ましい問題となります。
このような業務の場合に絶大な効果を発揮するのが、ローカルAIなわけです。不安ならネットワークケーブルを差し込まずに使うこともできるわけですから、どんなに機微な機密情報であっても遠慮無くローカルAIに食わせることができます。そのパソコンが盗難されない、他人に操作させない、という管理さえできれば、何も心配する必要はなくなるわけです。規模の大小に関係なく、業種にも無関係に、このような業務はきっと皆さんの会社にもあるはずです。それに不安なく生成AIの光をあて、PCで動くAIエージェントまで発展させることができれば、業務効率化への画期的な道が見えてくることは明らかですね。
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ローカルAIのマーケットはこれから立ち上がります。それにつれてこれを使った業務のAI化がどんどん進むことになります。そうなると「AIが入っていない会社は、働く場として魅力が低下する」ことが明らかです。この魅力を高め、人財採用難に負けない会社にしてゆくことが日本企業の急務であり失われた30年に終止符を打つ決め手だと考えて間違い無いはずです。是非皆さんもローカルAIの活用範囲を考えたり、ローカルAIのテストに着手されることをお勧めします。
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