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IT化経営羅針盤269 CESから見た「スマートグラスの離陸」

2026.02.03

スマートグラスについては、このコラムでも数回話題にしたことがありますが、年々完成度が向上してきて、CES2026を見る限り「2026年は離陸の年と言えるだろう」と再認識しました。

スマートグラスは、ゴーグル型の端末ではなく、あくまでもめがねやサングラスの形をしています。機能的には以下の二つに分類されます。一つが「表示装置としての機能がメイン」なもの、そして二つ目が「情報表示端末としての機能がメインのもの」です。これらの呼び方は、当社独自のものなので、いずれもっとスマート?な表現が出てくることを期待します。

スマートグラスの歴史は意外にも古く、エプソンの「Moverio」やグーグルが「グーグルグラス」を発表したのが2010年代前半のことでした。この内、グーグルグラスについては、のちに様々な理由をつけられて製品化が中止となり、前者も含めて産業用として販売を継続しています。エプソンの製品は、前述の分類を使うと「表示装置」であり、グーグルグラスは「情報表示端末」でした。今回、このコラムで取り上げるスマートグラスは、この「情報表示端末」です。

グーグルグラスは、当時としては画期的だったと思いますが、いくつか実用化には難しい問題を抱えていました。一つが「目への情報投影技術」です。グーグルグラスは、物理的な光学投影機構を右目の前に持っていました。これは視界をその分奪うこととなり、コンシューマ用としても産業系で使うにしても安全性が問題となることは間違いありません。私だったら、これを「一日付けて仕事をしろ」と指示されたら、精神的な苦痛を感じたと思います。

また、AI技術がこなれていない当時としては、操作系が問題になることは避けようもありませんでした。マウスカーソルなどを表示することは単に「邪魔」になるだけですので、よろしくありません。となるとPCでの操作は無理ですね。Androidなどのスマートフォン向けのOSを使うことになりますが、物理的な画面を持たないスマートグラスですから、そもそもタップする場所を決めることができません。かなりの工夫が必要なことも事実でした。それもあって、現実的には「専用アプリ開発を前提とした産業用途でしか使えない」という結論に至ったのだと思います。

さて、それから10年も経過した今日の情報表示端末系スマートグラスは、前述の課題をかなりクリアできています。まず、目への情報投影ですが、透過型のレンズをつかって、文字を浮き上がらせることができるようになりました。つまり、視界の邪魔をする物理的な構造体が存在しないわけです。文字やアイコンなどを二値のデータであればくっきり表示できますので、コンシューマ用途であれば、道のナビゲーションや、人がしゃべっていることを文字化したり翻訳してリアルタイム表示することが可能です。実際、(真偽は不確かですが)CES2026のある会議セッションで、登壇者がスマートグラスを思わせるめがねをかけて話しをしている姿を目撃しました。おそらくスマートグラスをプロンプター代わりに使っているのではないかと私は推測しています。また、めがねのつるの部分に組み込まれた小さなスピーカーを使って音声でユーザーに情報を伝えるメタのグラスのような派生系もあります。騒音がそれほどでもない場所であれば、十分に使い物になるでしょう。

また、最近のAIの進化もスマートグラスの実用化に向けた強力な後押しとなっています。音声の文字起こし機能もAIですし、ユーザーが声で指示して表示内容を切り替えることができるものもAIを使っています。さらに、指輪型のインプットデバイスで操作するものも含め、表示するコンテンツの多くにAIが使われ、その機能がビルトインされたものも多数商品化されようとしています。

ここまで発達してくると、企業用に使うべきだと思う人は増えてくるわけで、CES2026ではドイツのシーメンスが産業用にメタのスマートグラスを使うことを発表していました。スマートグラスは両手を束縛しませんので、作業用としては最適です。書面や手持ちデバイスを操作したり見たりすることなく、めがね側から情報が表示されたり聞こえたりするので、作業者の負担も大きく減ることでしょう。しかも、スマートグラスはコンシューマ用での販売単価を見ると数万円レベルで購入できるので、産業用として大量に仕入れる必要があっても、投資負担を最低限に抑制することができます。高価なデバイスを新規導入する必要が無いので、この点でも普及は意外と早いのではないかと思います。

あくまでも「産業用」という話を展開してきましたが、スマートグラスは「商業用」にも適しています。控えめなカメラとかマイクが仕込まれたものもありますので、これらの機能を使うことで顧客対応用としても広がる可能性を秘めています。外国人が来店した時の対応、商品の説明を求められたときの知識ベース閲覧、見るだけでバーコードを読み解いて棚卸しする、といった機能は容易に想像できます。

ハードウェアとしてのスマートグラスは、中国系の多数の企業が製造に参入していますので、最初から値段がこなれている珍しいデバイスとして世の中に出てくることは確定です。さらにCESの運営事務局であるCTAも、スマートグラスを「プラットフォーム化した」と評価しています。PCやスマホなどと同様の呼び方ですので、彼らも「いきなり本命となった」と言及することにしたのでしょう。 このように、スマートグラスは今年一気に普及期に入ることは間違いないと予想できます。高価なデバイスではありませんので、是非自社システムとの連係を考え、活用を考えてはいかがでしょうか?度付きのスマートグラスを作ることも可能ですよ。

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