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IT化経営羅針盤 CES2026で垣間見た デジタルツインの離陸

2026.02.10

「離陸」という言葉を前回に引き続いて使ってしまい、自分のボキャブラリーの乏しさに少しげんなりしていますが、今回のトピックスとはまさに適合するので仕方ありません。

「デジタルツイン」・・・これは最近登場したものではなく、2010年を過ぎたころから使われている、比較的古い用語になります。簡単に説明すると・・・

製造業で現実の機械や工場をデジタル空間上に仮想再現する技術

その上でシミュレーションを回すことによって、設備の故障を予測したり、生産ラインを最適化したりと、効率向上に役立つ

といったものになります。何しろ、物理的に作らなくてもデジタル空間上で動かせますので、これが理想的に実現できれば、かなりの効果を生みそうですね。生産のシミュレーションテストもできますし、少し複雑な構造の機械であっても、消耗品の事前交換や、故障予測などもできます。それに、新製品を投入する際でもその生産数量のシミュレーションと、デジタル空間上での生産効率改善活動も可能になります。

このようにデジタルツインの考え方は良いのですが、とにかく実現が難しかったことが普及が遅れている・特に中小企業ではなかなか進まない主原因です。つまり、現実世界の法則を含めた詳細をデジタル空間上に再現しなければ意味が無いので、その作業が膨大で難易度が極めて高いのです。もちろん、中には工場フロア一つ分全体を精緻にデジタルツイン化し、生産シミュレーションを実行する事例などは観たことがあります。しかしそれは一部の大企業のことでしたし、しかもかなり限定された使われ方をしていました。

しかし、です。これからの話は、これから起きることなので、私の予言と思って頂いて結構なのですが・・・

デジタルツインを構築するための各種の手間を生成AIが肩代わりしてくれるのであれば、この「作るためのハードル」はいきなり消えるか小さくなります。例えば工場のフロアであれば、建物や配電の図面、設置される機械類の仕様書と図面、什器類の図面などをAIが読み取り、それをデジタル空間上に自動構築するわけです。また、図面や法則が特になくとも、今までの実績のデータから類推したモデルをデジタル空間上に構築することもできそうです。例えば、部材の発注先の動きをデジタルツイン上にモデル化する、等の使い方です。そもそも発注先をモデル化しようとすると、その動きの法則を解き明かさねばならず、それだけでも大変でした。しかし、過去の実績をベースとした「現象」として捉えれば、それは学習の対象にできますし、学習・推論が可能になればデジタルツイン上にモデルとして構築できます。

これが手間なくできるようになると、おそらく産業界は革命的なことになるでしょう。「デジタルツインが理想的に組み上がる」ことが前提ですが、生産効率や品質の作り込みなど、人間の勘と経験と度胸によってだけ実現できていたことが、AIによるデジタルツイン構築によって可視化され、計算も予測も立てられるようになるのですから。

今回のCESでは、ドイツの企業が「AI+デジタルツイン」の発表をしていました。言葉や数字を生成する従来の生成AIの使い方を超え、人間ができなかったことを肩代わりするようになる、次世代のAIの使い方です。サプライチェーンと生産プロセスを一体でデジタルツイン上に構築できれば、昨年話題にした「デジタルプロダクトパスポート(DPP)コラム243参照」も、対応がしやすくなりますので、いちいちややこしいデータフローの設計をしなくても済むようになるでしょう。DPPがEU圏への輸出のハードルにならなくなる可能性が出てきます。サプライチェーンまでデジタルツインとなるので、トレーサビリティ確立の方法も根本的に変革できるかもしれません。

事実、CESでドイツのシーメンスはペプシコ社の新工場をまるごとデジタルツイン化し、その設計やオペレーションの改善を図ることに成功したと発表しました。実際その時、ペプシコのCEOは、「導入から約3か月でスループット(生産量)が約20%向上した」と述べています。これは相当大きな経営インパクトがある数字だったことでしょう。

このような、生産革命と言っても過言ではないAI+デジタルツイン、アンテナを高くしておく価値は充分にあります。何しろ動きが早いので一瞬の隙も無くみていないといけませんね。着目推奨です。

※写真は、CES2026で開催された、シーメンス社のキーノートの様子です。

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