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IT化経営羅針盤13 「業務システムは壊れていくもの?!」

『鈴木さん、当社は5年前に基幹システムを刷新したのですが、どうも最近業務効率が落ちているみたいで、社員の手作業が多くなってきている気がします。一度アドバイスを頂けませんか?』
昨年そんなご相談をお受けしました。私はシステムの健康状態をチェックする様なコンサルティングを提供しているワケではないのですが、ながくお付き合いを頂いている社長さんからの依頼でしたので、スケジュールを作って山奥のかなり標高の高いところにある会社に行きました。
ちなみに当社のお客様のうちほとんどは、このような山奥にある工場であることが多く、雪が降る季節は結構大変です。過去何回か大雪で通行止めになり、急遽温泉旅館に宿泊したことや、車中泊したこともあります。それ故に、冬の間は寝袋と非常用の水や簡単なお菓子程度は社用車(多少の積雪でも移動でき、車内で簡単な事務仕事もできるクロスカントリーミニバンです)に載せて移動しています。
脱線しましたので話を戻します。
さて、その会社の業務担当者から小一時間困りゴトを聞いたところ、以下の経緯がはっきりしました。
・5年前にシステムを刷新した時には、当初は戸惑ったものの、慣れるに従ってスムーズに業務が処理できるようになった
・しかし、その後新しい仕事が発生するたびに、それに対応する機能をソフト開発会社に依頼して作ってもらってきた
・そのソフト開発会社のエンジニアはとても優秀で、こちらから指示した通りにソフトウェアを修正してくれた
・しかし、機能を追加修正する度に、それとは無関係なところで小さな手間が増えたり、入力項目が増えたりして、だんだん操作が面倒になってきた
・その煩雑さが気になってきた時に振り返ると・・・せっかく刷新したシステムが非効率に見えてきた

これらの経緯のどこに問題があるのか解りにくいのですが、私の目から見れば、そのソフトウェア開発会社の優秀なエンジニアさんが「こちらから指示した通りにソフトウェアを修正してくれた」のが根本的な問題だと思います。
それはなぜいけないのでしょうか?
ご存じの通り、業務システムはいくつかの大きなポリシーの下に基本設計されているものです。
例えばある会社が、・・・
B2C販売向けの販売管理システム
を導入したとしましょう。販売している商品を個別の個人に販売・個別発送する業態で、当初システムは非常に便利に稼働していたとします。ところが販売している商品の種類を少し変えたところ、企業のお客様から大口ロットの発注が来る様になったとします。こんなケースは通販会社であればいくらでも発生することですし、対応しない手はありません。喜んで販売するワケですが、
まとめ買いなので掛け売りに対応してね
配送は各事業部の拠点に小分けして送ってね
その際の納品書にはXXXと書いてね
請求は本社資材に締め日にまとめて送ってね
といった、B2B取引ならではの要求事項が発生します。
こうなると、B2C販売向けのシステムでは構造上対応できないことが多数発生してきます。そこでその優秀なエンジニアさんにたくさんの要求を出すことになります。
売掛管理できるように締め日集計できるようにする
受注を受注明細にわけるのではなく受注自体を事業部毎に分割できるようにしたい
客先指定納品書を印刷できるようにしたい
等々の要求です。
前述した通り、元々このシステムはB2C販売向けのシステムなので、顧客情報や受注情報については個別販売を前提とした作りになっています。それを半ば無視して改造要求を出し、窓口のエンジニアさんが優秀であるが故にソフトウェアの改造ができてしまう場合があるのです。
そうなるとその副作用が発生してきます。
個人のお客様であっても締め日をどうするのか入力する
納品書の必用有無を登録する
複数の配送先を登録できるようにしたので、個人のお客様でも登録しないといけなくなる
等の手間が発生することが「システムをポリシー外の方向に改造した副作用」です。
このようなことを何年にもわたって繰り返せば、エンジニアさんはその都度お客様の要求に対応し、徐々に元のシステムのポリシーから外れた改造をし続けることとなり、そのたびに小さな手間が副作用として増え、それが重なり続けることで システムの運用効率の寿命 を迎える、という事態に発展するのです。
もちろん、当初のポリシーをきちんと守ろうとするエンジニアさんの方が大勢なので、その場合には上記のようなことはおきません。しかし、そのポリシーを守ろうとする意思が強すぎると「あそこにはいくら頼んでも対応してくれないから、手で頑張って処理しよう」という諦めと非合理的な判断に繋がり、これも業務効率上の破綻を招きかねません。
繰り返し申し上げていることですが、システムとは「人間とソフトウェアが協調性を持って動いている状態」を表す言葉です。つまり常に人間とソフトウェアがバランス良く役割を分担しなければなりません。
まず自分達が導入したソフトウェアはどのようなポリシーの元に作られているのかをきちんと把握・理解した上で、人間でやらないといけない部分とシステム変更をお願いする部分、もしくはソフトウェアの設計ポリシーを大きくはずれる要求である場合は、外部の違うソフトウェアを導入して現ソフトウェアと連係させるなどの工夫を続けることが肝要です。
ソフトウェアの基本ポリシーを導入者側の顧客がきちんと理解することは、実際にはかなり難しいのですが、それをきちんと教えてくれるソフトウェア会社さんこそが、真に優秀な会社さんなのだと思います。
業務ソフトウェアは長年使うものですし、ソフトウェア会社さんとの付き合いもその間続きます。お互いの目に見えない相性の問題も大きいと思います。きちんと意思疎通ができる会社さんを選べるにようにしたいものですね。

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