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IT化経営羅針盤19 「システム」と「ソフトウェア」の違いとは?

先日、これから社内システムの整備を計画されている中堅企業の社長から以下の様なご相談をお受けしました。
「鈴木さん、当社も今の業務のやりかたではこれ以上の成長を求められませんし、社員も役員も仕事を回すだけで手一杯になっているので、業務を抜本的に効率化できるシステムを選びたいと思っています。手伝って頂けませんか?」
よくあるご相談ですので、お話の途中までは素直に耳を傾けることができたのですが、社長が様々な「業務ソフトウェア」のカタログを机の上に並べ始めたので、思わず言ってしまいました。

「社長、システムとソフトウェアは違いますよ。何か誤解されていませんか?」

その場に居た社長と役員の方々は「えっ?」となりました。やはり混同されていらっしゃった様です。
この話は他の会社様でもよくあることで、英語圏の会社には無い日本特有の事象だと認識しています。

試しにこれらの単語がウィキペディアでどのように説明されているか調べてみたところ、

ソフトウェアとは・・・(前略)何らかの処理を行うコンピュータ・プログラムや、更には関連する文書などを指す(後略)

非常に技術寄りの解説ですね。ここまでは皆さんも理解しやすいと思います。

システムとは・・・(前略)相互に影響を及ぼしあう要素から構成される、まとまりや仕組みの全体(後略)

おや?「システム」に関する説明の中には全然コンピューターっぽい用語は出てきません。いわゆる上位概念を示す言葉であるといった表現の解説が続きます。
このままでは非常に解りにくいですね。

企業における「システム」の位置づけを説明する際、私が良く引用するのは、アメリカのアポロ計画でアポロ13号が往路爆発事故を起こした際にミッションコントロール(責任者です)だったジーン・クランツの言葉です。
彼の10箇条のアドバイスの中に
システム全体を掌握せよ
という言葉があります。
更にクランツは「システムは機械のことだけではない。関係するヒトとモノ全部なのだ。(意訳)」といった発言もしています。彼の目には、故障した宇宙船、限られた電源、3名の飛行士とその労働力、宇宙船の中でもまだ動いている機能、地上にある設備と機能、地上の人材の知見と労働力、といった構成要素全てがシステムだ、と見えていたのだと思います。
それを裏付けるのが、クランツの次の発言です。

「そこにあるものがどんなものなのかではなく、13号の彼らを地球に戻す為に何に役に立つのか教えてくれ(意訳)」

というものです。
ここで言う「そこにあるもの」とは、言わずもがな、ヒトを含むリソース全てのことを指します。これら種々雑多なものを組み合わせて目的外にも使用することで、次々に発生する不都合な事象を解決していくことに成功します。
要するにクランツが使う「システム」という単語は「何もかものこと」なのです。それを全て細かく掌握することで、日常の管理だけでなく大きなリスクに直面した時にも工夫して乗り越えることができる、という考え方です。その考え方と強力なリーダーシップにより、13号は無事に帰還することができました。人類の有人宇宙開発史の中で、これは大成功な失敗であったと思います。

さて、一方で我々が考えている企業の業務について考えてみましょう。
当然のことを言いますが、ビジネスはヒトが回します。経営者や担当者はビジネスを効率よくしたり、お客様によりよいサービスを提供したりするために頑張って働きます。
このような人間の活動を前方後方で支援するのがソフトウェアです。
クランツの言っている「本当の意味でのシステム」は、これらヒトもソフトウェアもその構成要素の一つに過ぎません。
ヒトの働きとソフトウェアの働きを全て総称して「システム」と呼び、これらを全部掌握して管理下に置くことがシステムをうまく回す秘訣である、という考え方です。
ここまでお話すればご理解頂けると思いますが、「システム」は単純に探してきて買ってくるものではありません。
「真にビジネスに役に立つシステム化」を正しく説明をするのであれば、こうなるでしょう。

自社のビジネスの質と量を高めるために、それを支援するためのソフトウェアを選定・開発して導入し、平行して、ヒトが担当する作業もソフトウェアとの協働で最適化する

システムは「買ってくる物」ではありません。「作ってもらうもの」でもありません。ヒトとソフトウェアが一体として整然と動く様にするための業務改革と仕組み作りなのだ、と理解頂くべきものです。

「システム」に関するきちんとした日本語の単語が見当たらないことから、色々な誤解を生んでいると思われますが、このような概念について腹落ちするように社員全員で理解し、ITを使った業務改革が実現できれば、大きな業務構造変革を達成できると思います。

「システム」と同様「プロジェクト」についても大きな誤解が蔓延していますので、それも解説が必要かと思いますが、次のチャンスに回したいと思います。

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