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IT化経営羅針盤37 DX化を合理化の隠れ蓑にするな!

「顧客との接点を見直すため、店舗網を再構築する。来店を待つ営業スタイルから、顧客訪問やデジタル化を通じた攻めの営業に転じたい。システムの置き換えを機に人員を再配置して『課題解決型金融情報サービス業』に進化する」
これはある地銀の頭取さんの言葉が大手の新聞に掲載されていたものの概要です。私はこのインタビュー記事に目が釘付けになりました。なぜならそれは「顧客接点を改革することで企業の成長を図る」という当社のコンサルティングポリシーそのものの行動を、地方とはいっても金融機関という大きな企業が取り組んでいるという、日本では類例が少ないDX化事例だからです。他の金融機関であれば、「IT化やRPAの活用によって、年間XX人分の工数を削減できました」とか、「高機能なATMやTV電話などのコミュニケーション機能を導入し、支店を出張所に改編する。これで年間XX億円の経費合理化になる。」といった、極めて合理化色の強い施策を打っているからです。ところが、先の銀行では、デジタル化を通じた攻めの営業の例として、「課題解決型」の「金融情報サービス業」になるのだ、と、より踏み込んだ施策レベルまで言及しています。これはもう、「単なるお金のやりとりサービスはやめて、サービス業に移行するのだ」という大改革です。
では、なぜ「システムの切り替えを機に大改革を起こせる」のでしょうか?それは、システム化、DX化によって、

本来人間でなくともできてしまうことを機械に任せることができるから
人間が手間をかけてやってきた連絡や情報提供などもシステム化により機械が一部を代行できるから

です。誤解を恐れずに直言すれば、銀行の業務のうち、単純にお金のやりとりを記録して管理する「トランザクション系」の仕事は、正確性は求められますがそれ以上のことはありません。正確であることが必要条件であるがゆえに、それ以上に正確に(?)しても付加価値にはなりません。一方で、お金をどのように運用するかは、AIも伸びてきていますが、やはり信頼のおけるベテランの人間に相談したい、というのが人情です。お客様がお金に関する課題をお持ちなら、それを親身に相談して対策を考えて提案する、という職員こそ、これから求められる人物像であり、これが金融機関の進むべき成長方針なのだとも思います。しかし、それを行うためには、現在「機械でも本当はできることなのに人間がやっている仕事」をIT化したり廃止したりしなければなりません。そして(これは推測が入りますが)担当者が設定した方針に基づき、その顧客に適切な情報を選りすぐって自動提供できるようにする。これらによって、システムと人間が協働で顧客対応する、従来に無い顧客接点を生み出し、それをこれからの付加価値にする。それがこの銀行のシステム化の方針なのだと思います。
おそらくメガバンクはその規模が巨大すぎるがゆえに、なかなか経営方針の大転換、業態の変革に足を踏み込むことは難しいと思いますが、それよりも比較的小さい規模の組織や中小・中堅企業であれば「システム化、DX化をきっかけとする顧客接点改革による成長方針」は策定できます。ITやDXの業界の片隅に身を置くものとして、これらを合理化や人減らしだけに使ってほしくない、成長に貢献する使い方をして、きちんと世界の中で通用するIT立国になってほしい、と強く思います。

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