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IT化経営羅針盤52 ハンコの習慣が組織の柔軟性を阻害する?

2020.05.11

企業組織の中における捺印の習慣は、このデジタルの世の中にあってもしぶとく残り続けてきました。私が知っている範囲でも、よほどデジタルファーストの企業でも無い限り印鑑文化は根強く、さらにそのような会社であっても行政に対する各種届出や法令で定められた書類については、どうしても捺印や印鑑証明書などが必要となり、ハードウェアとしての印鑑を捨てることができません。一方で、昨今のテレワークへの急激なシフトは一種のパラダイムシフトとして企業の規模を問わずデジタル化への流れを強いています。行政への届出処理については、法令面での制約もあるため、なかなか自社の都合で改革することはできませんが、社内処理についてはなんとなく簡単にできるような気がします。では、具体的にはどうすればハンコを無くすことができるのでしょうか?少し整理して考えれば、社内処理におけるハンコの位置づけは・・・

担当者が上司に確認や承認を得るもの
かつ
(1)その証拠を社内の為に残しておくもの
または
(2)その証拠を法的・行政届出の為に残しておくもの

が目的であるはずです。(一昔前は、特に物作りの企業において、出荷検査を担当した人の印鑑が「品質確認証」のようなシールに使われていましたが、さすがに最近見かけません)
この内、少なくとも(1)については簡単にハンコを廃止できそうに見えますが、ではその代替え手段はどうすれば良いのでしょうか?簡単に思いつく手段は「メールによる送信・受信履歴での代替え」ですね。しかしこれにはかなり大きな罠が潜んでいます。ご存じの通り、メールはかなり秘匿性が高い情報伝達手段です。基本的には「個人から個人宛」に使われる手段であるため、その個人がメールを確認しなければそのまま放置されてしまいます。それが故に「なに?メールで送った?そんなもの見てないよ。」という上司からの叱責の場面があちこちの組織で見られます。乱暴に言えば、これは上司の責任逃れであることは否めないと私は思いますが、その言い訳はどうしても通用してしまいます。さらに、「メールを見ていないのは上司としての怠慢である」というトップダウンの指示をすることもあると思いますが、それが徹底されればされるほど「メールをリアルタイムに確認する」という習慣が発生し、人間がソフトウェアに使われるという構図になってゆきます。
では、仕方無いので書類処理専用のシステムを導入することを考える組織もあるかもしれません。しかし、これも現実的な運用はかなり難しいことがあります。「病欠している人が発生したら、その代行は誰がやるのか?」とか「承認に時間がかかっている時に引き戻しができる権限を担当者に与えるのか?」など、業務の設計に大きな負担が必要となり、しかも運用できたとしてもかなり硬直化した業務プロセスになりがちです。
ここまで話を進めると、「書類が捺印待ちの状態で上司の書類入れに積まれており、それを目で見ればどうなっているのかすぐにわかる」という従来通りのアナログチックなやり方がどうしてもベターに見えてしまいますね。
実は、これら「デジタルによる捺印の代替え処理」については、業務の硬直性の度合いを変化させているのみであり、根本的な改革の為の施策にはなっていないのです。
では、どうすれば本当の意味での改革ができるのでしょうか?それは、

権限と責任が明確な業務プロセスを作る

ということに尽きるのです。全く普通の考え方なので拍子抜けされるかもしれません。しかし、日本の組織において権限と責任が不明確なことは非常に多いのが現実です。たとえこれらを文書管理規定などで明確にしているつもりでも、その中には「起案・確認・承認」の各権限が職責に割り当てられていることが多く、結果的に誰が権限と責任を持っているのか解りません。さらに、責任に権限がセットになっていない場合も多く、「最終承認は他部署の部長」ということもあります。こんな状態ではハンコは無くなりませんし、それを無理にデジタル化しても複雑な処理の流れは放置され、うまく回ることは保証できません。

アフターコロナ、ではなくWithコロナの時期を迎えるのではないか、との論調が日増しに強くなっていますが、新型コロナウィルスの騒ぎにより日本の社会は否応なくデジタル化を迫れています。この際、「ハンコのかわりにデジタルに・・・」という発想ではなく、権限と責任がすっきりと明確化された業務プロセスへの変革を進め、本当にフレキシブルで迅速性のある組織への改革を目指すべきではないでしょうか?数年というスパンで考えると、目先のハンコのデジタル化ではなく、本質的なことを考えることが、Withコロナ時代の企業競争力を向上させるアクションであると強く思います。

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