代表コラム

「IT化経営羅針盤」 毎週無料配信中
中小企業のIT導入法や事務自動化方法を実践的に解説しています

IT化経営羅針盤54 業務システム構築はなぜ予算オーバーする?中小企業が陥りやすい落とし穴(2)

昨今の新型コロナウィルス対策で、システム化の推進を余儀なくされる会社が規模の大小問わず増加しています。この状態がどれぐらい長く継続するのか誰にも予測できないなか、テレワークやそれを実現するためのシステム化については、経営上の優先順位が高くなった企業が多くなってきていると思います。唐突にそのような状態に陥った会社が多いということになるので、当然「潤沢な予算を用意して中長期的に取り組む」というイメージではなく、今すぐ短期的に手持ちの予算でなんとかしなければならない、という経営者も多いでしょう。政府が予算措置を講じてこのような会社に対する財政的な後押しをしているわけですが、そうは言っても使える金額には上限があります。
その上限の金額の中で自社が必要と思われる機能を持ったシステムをカタログから探す方が多くいらっしゃいますが、そのアクションは実は大きなリスクを内包しているのです。例を挙げて解説してみます。

建材の卸売りを営んでいるA社は、従業員20名程度で、外勤営業が10名ほどの会社です。
営業は手書きの受注伝票や納品書を複写用紙を使って作成する事務業務をしなければなりませんでした。
複写された手書き伝票は、事務所に戻って自分でExcelに入力し、在庫を引き落としたり、売上を立てる必要があります。
それが手間なので、事務所にはパートが数名居て、事務作業をこなしていました。
手書き伝票を少しでもシステム化しなければ、「事務所に戻る」という作業はなかなか減らすことができません。
また、出先から在庫を確認したくとも、電話だけでなんとかするしかなく、なかなかタイムリーに解らなかったり、間違いも発生していました。
そこで、「せめて在庫情報と、出庫管理、売上計上まではシステム化し、外出先からでも操作できるようにする」ことになりました。
社長は(システムについては知識が無く、いやがっている)総務部長に「在庫管理システムを調べること」と指示しました。
また、社長はその時、「できれば可能な限り安く。高くても300万円以内で探すこと」と付け加えました。
総務部長は相談相手もありませんでしたので、WEBで「在庫管理システム」のキーワードで調べ、価格帯も300万円以下でできそうな会社とソフトウェアを表にしました。
全部で3社選び、資料を取り寄せたのですが、そのうち2社が「お見積が必要なので、お打ち合わせに行きます」という回答でした。
残りの1社は「当社の製品は小さな企業さん向けにできている簡易なパッケージソフトで、定価は100万円です。」と即答されました。
「お見積が必要」と回答した2社と打ち合わせの場を持ちましたが、「あれもできる、これもできる」との話で自社の要求を満足していそうです。
そこで、それらの2社にも見積もりを依頼しました。

さて、こうやって3社から金額が提示されたのですが、それがばらついており、「①100万円」、「②250万円」、「③300万円+別途カスタマイズ料金」というものでした。その金額を持って総務部長は社長と相談しましたが、値段以外に提示された中身は全く理解ができません。そこで社長は、「①の100万円でできる、という会社にしておけば、何か問題があったときにでもカスタマイズで機能追加して予算内におさめることができるのではないか」と判断し、①の会社にお願いすることにしました。
①の会社はその後自社のソフトウェアを持ってきて、使い方を説明してくれました。しかし、その説明を聞いた外勤営業とパートからは不満の声が出てきました。

客先ごとに納品書に記載する内容が違う場合があるので、それに対応して欲しい
外出先から在庫を確認できることは良いが、その場で仮引き当てができないと他の営業に取られてしまう
在庫が無い場合でも、すでに発注されていることがあり、その納期が確定しているのであれば外出先から確認できるようにしたい

といったところです。
そこで、総務部長は開発会社にこれらの機能を追加した場合のカスタマイズ見積もりを依頼しましたが、提示された金額は300万円でした。要するに、合計で400万円となり、予算オーバーです。

A社のアクションのどこに問題があったのでしょうか?まず、社長から総務部長に指示された内容は「300万円以内で在庫管理システムを調べる」ことでした。「在庫管理システム」と一言で表現してしまっていますが、在庫管理の仕事の中にも多くの仕事があり、どの様な機能が必要か全く明確にしていないことが第一の問題です。要するに「在庫管理業務」という言葉であっても、それはあまねくシステムで共通化している言葉ではなく、業種によるローカルルールも多いので、「機能を特定していない」単語なのです。
さらに、値段だけで①のシステムを選定したことも問題です。確かに定価がワンプライスになっておりわかりやすく安価に見えます。しかし、カスタマイズが容易なのかどうか全く確認していません。①を開発している会社にとっては、「このままカスタマイズなしで使ってもらうもの」が常識になっていることが多く、カスタマイズを要求された場合、開発体制を新たに構築する必要が生じる場合があります。そうなると、もろに人件費がかかってきて、それを全部A社に負担してもらわなければならなくなるため、「機能追加に300万円」というA社にとっては想定以上の金額が生じたわけです。

いかがでしょうか?システムを購入することは、例えば生産機械やトラックなどのように「比較的単機能」のものを購入する場合とは買い方が全く異なるのです。ソフトウェアの機能は細かく定義したり確認したりしなければならず、買う方にもそれなりの準備や買い方、というものが要求されるものなのです。これがおろそかになっていると、最終的にはA社の様に「規模の膨れ上がり」に巻き込まれ、思わぬ出費を背負い込むこととなります。

システムを買う側の綿密な準備、是非今一度認識していただければと思います。

無料メールマガジン登録

経営者へのIT化ヒントが詰まった代表コラム「IT化経営羅針盤」や、各種ご案内をお届けします。ぜひ、ご登録ください。