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IT化経営羅針盤57 「かっこいいデジタル化」その前にやるべきこと

2020.06.15

先週のことです。ある食品卸の会社の社長さんから次のような相談を受けました。「鈴木さん、私たちは今までとにかくアナログな仕事をしてきました。情報は全部紙の伝票ですし、FAXでのやりとりも多い。テレワーク化もしないといけないので、営業はタブレットで仕事をすることにしました。タブレットは購入したのですが、今はメールを見ている程度です。これからどうすればよいか指導してもらえませんか?」というお話です。私は30分ほど相談をさせていただきましたが、結果的にはIT化活動の進め方を大きく変えていただくことにしました。その理由は、「形から入ってしまっているので、まずはそれを修正する必要がある」からです。この社長さんは、「とにかく出先で営業活動ができるようにしたい」という考えで突き進んでしまい、それに対応するためタブレットの導入を思い立ったわけですが、タブレットを入れただけだとせいぜいメールのやりとりと、共有されたファイルの読み書きができる程度です。いわゆる「形から入ってしまった」という状態で実効性のある効果を見込めません。在庫を確認したくとも、その在庫のデータがタイムリーに更新されていて、かつ、それが送られてこないと確実な在庫は把握できません。さらに、伝票を紙からデータに変えてゆく、ということを具体的にリアルに計画できていませんので、「タブレットから参照できて在庫を確保して・・・」といった理想とする業務への変革の道筋が全く見えていません。
ここまで社長とお話をしていて、心配そうな表情で「タブレットを買ってしまったのは無駄だったのでしょうか?」とのご質問。いえいえ、完全に無駄とはいえず、使い方を工夫すれば当然投資した程度の効果は出ます。デジタル化にはインプット系とアウトプット系があります。理想論は両方とも同時にデジタル化することです。それができれば受注伝票の内容をデータ化でき、それ以降の業務がどんどんデジタル化し、結果的にタブレットで業務が完結するようになります。しかし、そのためには「データと仕事の流れの棚卸しが必要」なのです。それを飛ばしてタブレットを導入したことになるので、当然インプット系の仕事はできません。入れる先がありませんから。でも「なんらかの結果を閲覧する」ということであれば使えることもあるのです。そこまでお話をしていて、社長の顔の曇りはいくぶん晴れてきたように見えました。
今のようなお話、当たり前のようでいて実は非常に多く見受けます。中小企業の場合、社長が営業をやっているケースが非常に多く、社内の情報を全部タブレットで見たくなったり、「タブレット導入のついでに」見積もりや受注の登録をタブレットでやりたくなってしまうことがあります。しかし、タブレットに対するデータの「インプットとアウトプット」を両方整備するためには、バックヤード側のデータ化が相当進行していないとできません。この会社には、まずデータの流れを可視化することをおすすめし、そのための準備や体制を構築するための活動を展開していただくこととしました。
さてさて、社長には今後の進め方をご納得いただけた、と思い、肩の荷が下りたかと思いきや、社長から「ではその活動の間タブレットがもったいないので、在庫データの閲覧のために使うようにがんばります」とのお言葉。これもこれで心配です。なぜなら、、、「在庫情報を閲覧するためのデータは誰が作るのか?」ということがクリアできていなかったからです。在庫管理担当の社員がExcelで在庫一覧を毎日更新してくれるとのことでしたが、それはそもそも社長に見せるために管理しているわけではなく、在庫を管理したり不足品を発注することが目的であるため、社長や営業の立場から見えやすいものにはなっていません。「ちょっと修正するだけだから担当者に指示すればできる」という社長のお言葉でしたが、ではそれを毎日、もしくは、一日に何回かやらなければならなくなった担当者の工数をどうお考えになるのでしょうか?そのデータ更新の仕事が売り上げ拡大に直結し、それで担当者の成績が上がることが明確ならばやればいいと思います。しかし、ことはそんな簡単ではありませんね。下手をすると効率化に逆行する事態を招きかねません。
このように「外出先からタブレットで情報が見えればいいんだ、そのついでにちょっと入力できるようにすればいいんだ」と簡単な言葉で片付けてしまう経営者さんは非常に多いのですが、そのように「かっこいいデジタル化」から手をつけてしまうと、裏方のIT化は肉体労働化していくものです。業務のデジタル化の本質からきちんととらまえて地道な改革をしてゆくしか中小企業のIT化の道はありません。

是非、このような勘違いの無い、正しく堅実に売り上げに直結するデジタル化をめざしていただければと思います。

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