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コラム / IT化経営羅針盤

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IT化経営羅針盤56 業務システム構築はなぜ予算オーバーする?中小企業が陥りやすい落とし穴(4)

2020.06.10

国の給付金の振込がなかなか進まないとか、インターネット申し込みが役所業務の負担になっている等といったことが報道されています。なんでも「申し込み内容と住民基本台帳などの情報との照らし合わせが大変」ということのようですね。これは元々行政が決めていた情報セキュリティポリシーがあだとなって発覚した問題で、異なるシステムやネットワークの間を人間が橋渡ししなければならない為に起きていることです。収入減で困っていらっしゃる方が多いですし、簡単にシステムを改善できるわけでもないので、短期的には行政職員さんに頑張って頂くしかありません。
さて、これと同様のことが中小企業でもとても多く発生していることはご存じでしょうか?たとえ話をしてみましょう。「うちの顧客情報はきちんと管理できていないので商機を逃がしている。きちんとデータベースで管理できるようにして、タイムリーな営業を仕掛けられる様にしよう」と意気込んで顧客管理システムを導入される企業さんは多いと思います。そして、いったん顧客情報がデータ化され管理力が上がってくると、他の業務もシステムで合理化しようと考えるのは普通です。「では、次は受注管理システムを入れよう」ということで在庫管理・受注管理の仕組みを導入するでしょう。これら二つのシステムは、開発費を投入することができない中小企業の場合、できあいのパッケージを導入されるケースが多いと思います。ところが、これら複数のシステムを「その場限りで選んでいる」事例が非常に多いのです。当然、営業力を向上させるための顧客管理システムは営業業務向けにできています。ところが受注管理システムは社内の業務合理化が目的となっているので、当然「入ってくる受注をいかに効率的に処理するか」に主眼をおかれて設計されています。これらを別々に導入した場合にいつも発生する問題が「突き合わせ」負担です。
例をあげてみましょう。顧客管理システムにはお得意様であるA社さんが登録されています。少し大きなお得意様になると、A社様とは言っても複数の拠点が存在することがあります。A社の東京本社の窓口加藤さん、A社の札幌支店の窓口川井さん、のような形です。顧客管理システムはA社をまとめて管理することも、2拠点に分けて管理することも通常は可能であり、両方「A社」として束ねたり、本支店毎にバラしたりすることが自由です。ところが、受注管理システムの場合、A社の札幌支店から来る受注は札幌支店に請求書を出さなければならない場合や、札幌支店からの受注でも東京本社に一括請求を出さなければならない場合もあります。この請求先をどこで管理すれば良いのでしょうか?顧客管理システムは営業部門が管理していることが多いため、営業担当者が月締めの請求一覧を経理部門に提出することが多いと思います。それを受け取った経理の担当者は、A社のどこに請求すれば良いのか、請求一覧にメモが書かれていればそれに従いますし、書かれていなければ営業に聞くか顧客管理システムをのぞくか、受注管理システムのどこかに書かれていないか探すこととなります。さすがに「どこを見れば良いのかわからないから聞き回る」ということをしないように社内でルールを決めていることは多いと思いますが、それでも「どこかを参照する=照らし合わせる」という作業が発生していることは事実ですね。これがムダ仕事なのです。しかもこのようなムダ作業は担当者同士で話し合って自然発生的に現場で作られてしまうので、管理監督者や経営層が知らないうちに増えてゆくものです。
以上の様なムダな照らし合わせ業務がどうして発生したのか、根本的な原因を考えてみると、それは「顧客管理システムと受注管理システムが別々に導入され運用も縦割りであるため、連携度が低い」為です。システムとシステムがシームレスに連携しなければ、この課題は永遠に解決しません。さらに、「いったん複数のシステムに分かれてしまうと、それらを結合・統合するためには導入時以上に苦労することがある」ものなので、とてもやっかいなことになり、対策には大きな予算的ロス=予算オーバーがつきものです。
では、こんなことにならないようにするにはどうしたら良いのでしょうか?まず「会社の業務システムは一連の業務の動きを全体的に側面でカバーするもの」という意識を持ってシステム化に取り組むべきです。「この業務はこれ、その業務にはこれ」という形でつぎはぎの様にシステムを逐次導入していると、業務と業務の間の連携が前述の通り「照らし合わせ」などの手動に頼ることになってしまいます。中小企業さんはシステム投資に回せる資金は大きくありませんので、最初から「巨大なシステムを導入するべきなのだ」とは言いません。すくなくとも「業務間連携のグランドデザインをきちんと決めてから、それに沿って部分部分で計画的にシステムを入れてゆく」ことが肝要なのです。例えば先の例で言えば「お得意様情報と売り買いに使う顧客情報はどのような関係にあるのか?」をあらかじめ定義しておき、それにそって顧客管理システムを導入するべきだったのです。
このようなグランドデザイン無しに個別システムをどんどん導入されてお困りの企業は非常に多くみかけます。しかもそのシステムに人と組織が縛られているので、対策するのが非常にやっかいで手間と時間がかかります。
おそらくこんな状況が日本企業のIT化の立ち後れをまねいている一つの原因になっているのでしょう。

全体をグランドデザインし、それに沿ってシステム化してゆく。これが「照らし合わせ作業が負担になる」などの問題を回避できる一つの対策です。足下の業務を一回見直してみませんか?相当数の「照らし合わせ」が発生している可能性があると思いますよ。

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