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IT化経営羅針盤67 中小企業のシステム化は三元主義に基づくべきだ

「鈴木さん、当社は倉庫がパンクしそうなぐらい在庫を抱えていて、正直過剰在庫だと思っています。在庫を適正に管理するシステムがあれば対策できると思うのでアドバイスをください」。こう切り出されたのは、ある樹脂成形業の社長さんでした。そこで早速工場兼倉庫にお邪魔したところ、会議室に通されました。そこで現場責任者の方も交えて社長から困りゴトをお聞きしていたのですが、話がすべて概要レベルで、全然詳細の情報が無かったため、話を途中で打ち切り「社長、現場でものを見ながら話を聞かせて下さい」とお願いしました。なぜなら「システム化は三元主義」であるべきだからです。「システムの話をするのに、なぜ現場で話をしなければならないのか?」というご質問を頂きましたが、それをなだめなだめ、なんだか腑に落ちていない社長と現場責任者の方、私の3名で工場現場と倉庫を見に行きました。真冬でしたので、現場は冷え切っています。朝晩は零下まで室温が下がることでしょう。そんな中、作業員の方々は防寒着姿でヘルメットをかぶって黙々と作業をこなしています。ズボンのポケットには作業指示書や出荷指示書の束が無造作に突っ込まれていて、作業をするたびに取り出しては鉛筆で何やら書き込んでいました。その一部を見せて頂くと、欄外に足し算引き算の走り書きもあります。電卓を持っていなかったのでしょうね。とことんまでアナログチックな現場であることは明らかです。それでも現物を見ないことにはいけませんので、社長が「在庫が管理できていない」という「在庫」の山を見に行きました。いくつかある倉庫棟のうち、3号倉庫に入ったところ、段ボール箱や通い函がパレットに積まれており、それが2段重ねになっていました。近くの作業員の方にお願いして、上段1パレットをフォークリフトで下ろしてもらい、中を片っ端から開けてみました。当然部品か製品が入っているはずの箱でしたが、なんと1パレットまるごと中身無し。これはいったいどういうことでしょうか?担当の作業員に「なぜ空き箱をパレットに積んでいるのか?」素朴に聞いてみたところ、「箱が無ければ製品も仕掛品も片付けられないでしょ?箱が無いと運べないんですよ。だから箱はとても大切なものなの。軽いから上にも置けるしね。」との回答。「箱はたたんでおいて、必要な時に組み立てれば良いのでは無いですか?」と一回突っ込みを入れましたが、それに対してにべもなく「そんな面倒なことをすると作業効率が落ちるから嫌なんです」とのレスポンスです。更に「では、この3号倉庫の“在庫”の山のうち、どれぐらいが空き箱なの?」と恐る恐る聞いたところ、「うーん、正確にはわからないけど、だいたい半分ぐらいが空き箱じゃないかなぁ。」というショッキングな回答が返ってきました。
ここまで言えばもうおわかりですね。倉庫全部の全パレットをひっくり返したわけではないので数字では言えませんが、少なくとも相当数の“在庫の山”が空き箱である確率が非常に高くなってきました。試しに他のパレットの箱を無作為に開けて中身を確認しましたが、少なくとも「何割」のオーダーで“在庫の山”が空き箱だと判明しました。
要するに、この会社では「システム化の前に3S活動が必要」だったのです。空き箱の用意が必要なのであれば、箱の形に合わせて空き箱置き場を用意し、場所を定めるところから始める必要があるわけです。システムの出番はそれができてからです。
さらに、現場を熟知しているはずの担当者でも、「どの山が空き箱で、どの山が製品なのか」を即答できませんでしたので、きちんとした「置き方の決まり」が必要です。置き方の決まりが定まれば、それをシステム化すると「在庫ロケーション」とか「棚番号」になり、「何がいくつ、どこに保管されているのか」がデータ化できます。その置き場所の決定なしにシステム化もデータ化もできません。つまり、
現場の場所や建物、作業導線の制限をしっかり確認してから在庫のデータ化に取り組む
という順番でしか在庫管理のシステム化はあり得ないのです。これは、在庫管理システムだけでなく、生産管理でも他の事務系システムでも、基幹システムでも同じです。現場をきちんと三元主義で把握し、それをどう変えたいのか定め、それが現場で運用できることを検証してからシステム化を考える、という、三元主義に基づいたシステム化プロセスが前提なのです。
実に多くの経営者さんがこの「三元主義」と「システム化」の関係性に無頓着なまま「システムはシステム」という合い言葉で突っ走った結果、痛い失敗に終わるといった経験をされていると思います。

三元主義に基づいたシステム化については、他にも色々事例がありますので、折に触れて説明したいと思いますが、今一度皆さんに問います。「システム化したい業務があるなら、その現場の実情をきちんと理解していますか?」

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