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IT化経営羅針盤31 企業のDX推進 実証実験と実用化の間の深い谷

2019.11.08

DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が、中小企業の間でもほぼ流行語の域に入ってきたと思います。IoTだのAIだのRPAだの、本当にIT業界を起源とするバズワードの変遷はめまぐるしい。なかなか追いつくことができません。ただ、物事の本質はずっと昔から何も変わっておらず、バズワードが切り替わるのみで中身はあまり代わり映えしません。ビジネスの世界でこれらのワード全てに共通することは「デジタル化とデータ活用」です。例えば、基幹システムであっても業務をデジタル化し、データを蓄積して、今後の戦術に活用したり、IoTであればシステムにセンサーが部品として組み込まれたりしただけで、データの活用領域まで施策が進まないと単なる警報器とかパトライトになるだけです。DX化に至ってはその概念がものすごく広く、要するに

システムやらIoTやAIも使ってどんどんデジタル化しましょう

という簡単に一文で説明しきれてしまいます。この様なバズワードに飛びついたり惑わされたりすること無く、それぞれの企業において経営方針に沿ったデジタル化を粛々と推進すれば、将来流行するであろうバズワードがそれを追認してくれるに違いありません。事実、私が前職でWEBシステム開発していた際、「お客様の希望に合わせて製品をカスタマイズするサイト」を作ったワケですが、その後に「ワンツーワン」というバズワードが追いかけてきて、「そうか、我々が作ってきたモノはワンツーワンサービスって言うんだね!」という話になったこともあります。最初からワンツーワンのシステムを開発したい、と思ったわけでは無く、会社の方針に沿って作っただけ、という実情であるわけです。
さて、バズワードに対する不満表明はこの程度にしておいて、今回のお題目の「実証実験と実用化の間にある深い谷」のお話に進みます。

ITにおける「実証実験」とは、最近(さらにバズワードで恐縮ですが)「PoC Proof of concept」という言葉が流行っています。ITベンダーさんによっては、PoCという言葉を説明もなく使っているところもあり、「PoCも知らないの?」のスタンスで話を切り出されてしまうこともあります。
このPoC(いや、私は実証実験と呼びます)ですが、これがうまく行けば実用化できる、と広く誤解されています。ところが、例えばRPA導入などで実証実験を展開した会社の多くは実用化に至らずに止まってしまいます。統計データを持ち合わせていませんので、数字で表すことはできませんが、私が話を聞いた範囲では、おそらく過半数を超える会社が実証実験で止まっていると思われます。
その事実に気がついて、メディアもIT企業も「実証実験地獄で止まらないようにするためには・・・」という発信をしていますが、その説明の大半が「経営方針にDXを組み込めていない・現場任せにしている・改革のマインドセットが足りない・委託先に投げっぱなしになっている」といった、経営に対する抽象的な意見提言に留まっています。
確かに、経営が強いリーダーシップを発揮してDX化を推進することには意味がありますし、それによって成功に導かれた会社も数多く存在します。しかし、DX化・業務のデジタル化はそれだけで回るのでしょうか?強いリーダーシップがあったから、リソースを使って実証実験ができたはずです。それなのに実用化段階に進めないのはなぜでしょうか?
その答えは、私は「全体のデジタル化方針と計画の欠如」だと考えています。よく、「実証実験の対象はこれだ」といきなり決めつけて始めてしまう会社を見るのですが、どうしてその対象を決めることができたのでしょうか?理由を伺ってみると「この仕事が大変だから」、とか「経営者から見て、これが課題だと思ったから」という答えが返ってきます。なんの脈絡もなく、ある一つの事象だけ捕らえて、それを対象に実証実験しても、その後に繋がる文脈やストーリーが無いので、その先に発展させてゆくための原動力になりません。これを

実証実験と実用化の間の深い谷

と呼びます。
では、どうすればこの谷に落ちることなく実用化に進めるのでしょうか?先ほど「全体のデジタル化方針と計画の欠如」だ、と表現しましたが、いきなり実証実験に手をつけるのではなく

自社の方針
方針を実現するための施策
現場の課題と対策案
対策の難易度や効果の評価・優先順位化
これらをミックスした実現順番を含む基本計画

この基本計画が仮であってもできあがっていないと、実証実験の次に続くストーリーや、それにリソースを投入しても、投資以上のリターンがあるかどうか判別できず、「深い谷」に陥るのです。これらのコトを前述の通りメディアやIT企業さんは「抽象的な意見提言」で言い換えてしまっており、次の行動に繋がりにくい状態を生んでいると思います。
更に、「これは日本の企業が自己改革できにくいことを如実に物語っている」等と文化面での事象に言い換えられてしまうこともあります。私はこれを「完全なミスリード」だと思っています。

では、どうすれば「深い谷」に陥らない様にできるのでしょうか?先ほど「基本計画」と表現したことを作ってから、その実証の為に実証実験対象を選べば良いのです。
経営の方針や経営が持つ課題はいくつもあります。
一方、現場の持つ課題も別に存在しています。
これらを両軸で分析すると、経営方針が実現できない現場課題、が浮き彫りになっていきます。これをまとめ上げることができると、「経営課題や経営方針を次々と実現するための実行計画案」ができるのです。しかし、これはあくまでも案に過ぎないことが多くあります。この「案」の一文字を消すために実証実験は存在するのです。実験の結果、想定通りの効果をもたらせば、それは「実験で確認された事実」となり、その後は事前に計画した順番で進めていけば良い、という単純な構造になるのです。これは「企業のDX化の為の推進エンジン」と呼んでも過言ではないでしょう。

実行計画案を作る為には当然時間も工数もかかります。しかし、それを省略していきなり脈絡なく実証実験にとりかかっても、多くの場合は深い谷に落ちてしまうだけです。
急がば回れ
のことわざはここでも有効ですね。
是非、全体の青写真を作ってから実証実験に移行しようではありませんか。

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